「たそがれ野球ノート」(8)-(小林 秀一=共同通信)

◎シーズンオフは読書を
昨年秋、野球関連の一冊の本と出合った。早稲田大学スポーツナレッジ研究会が編集した「オールアバウト・ベースボール」。「日本野球150年の到達点と課題」の副題がついている。11の項目に分かれ、各分野の専門家の論文を集約したもので、中身が濃く、一読の価値ありです。
まずは北海道日本ハムファイターズの報告。年間50億円の赤字だった球団を札幌移転して7年後には売り上げを5倍に伸ばした内幕が描かれている。報告者は当時の球団社長で、フロントの活性化などマネジメント改革は興味深い。
そのほかのプロ野球関連では元巨人球団社長がスポーツビジネスの構造を解説。別項では「決算公告」がない巨人、中日の問題点を指摘し、ガバナンスのあり方を考えさせられた。
高校野球に関しては経営学の観点から分析、さらに独立リーグは現場を引っ張っていった首脳の率直な声が伝えられ、今後の取り組みや方向性についても触れている。
MLBビジネスの体系的な分析。さらに平岡凞(ひろし)にスポットを当てた野球史の検証や、「投手に見る働き方改革」「日米球団のオーナーシップ」と続いていく。各項目とも「そうか、こんなとらえ方があるのか」と感心したり、あるいは忘れかけていたことを思い出させてくれる内容だった。
さてさて、新年になって、わが東京プロ野球記者OBクラブの菅谷齊会長が「日本プロ野球の歴史―激動の時代を乗り越えて」(大修館書店)という大著を出版された。私はまだ触れていないが、一足先に手に入れた元記者の友人は「簡にして要を得た記述でこの種の著作としては実に読みやすい。随所に盛り込まれたコラムも利いていて、写真とともに激動の歴史を生き生きと語っている」と感想を伝えてきた。(了)