「大リーグ見聞録」(73)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)

◎大物外国人打者はもう来ない
▽国内外に2つの理由
 2024年のプロ野球は3月29日にセ、パ両リーグ揃って開幕する。今季も元メジャーリーガーを含め、12球団に約30人の外国人選手が新たに入団した(支配下選手)。とはいえ、名前を聞いてピンとくるような選手はいない。今季、日ハムに入団したF・レイエス(前ナショナルズ)がメジャーで2019年に37本、21年に30本を記録。大砲と目されるが、年俸は1億円+出来高。評価はそれほど高くない。
少し前までは、ほとんどのチームで助っ人がクリーンアップを打ち、タイトル争いをするのが当たり前だった。それが2022年、23年ともに新外国人選手の打率ベストテン入り0。タイトル争いにも絡んでいない。旧知のMLBのスカウトに連絡してみた。複数球団でスカウトとして働き、今年はナ・リーグの某球団に所属している。彼は2つの理由を挙げた。
「ひとつは2022年から、ナ・リーグでも正式にDH制が採用されたこと(20年はコロナ禍で特例での採用)。そのため15球団で、1人は打つだけの選手が仕事を確保できるようになった。レギュラー選手を休ませるため、DHに利用する球団もある。各球団とも選手を許容する範囲が広がった」
 これまでプロ野球では守備や走塁に目をつむり、打撃だけで助っ人を獲得することがあったが、そうしたケースはなくなりつつある。
「もうひとつは日本の投手のレベルが格段に高くなってきていること。ドジャースに山本由伸(12年約471億円)、カブスに今永昇太(5年約119億円)、パドレスに松井裕樹(5年約39億円)が高年俸で移籍したように、メジャーでそこそこ活躍した程度の、中途半端な打者ではプロ野球では通用しない。かといってバリバリのメジャーリーガーや将来性のある若手や中堅は来ない。年俸がどんどんアップしているからだ」
▽助っ人のたらい回し
 大物外国人選手が来なくなったことに比例して目立つのが、国内での外国人選手の移籍だ。今季もK・ケラー(阪神→巨人)、L・カスティーヨ(ロッテ→オリックス)、N・ソト(DeNA→ロッテ)、A・ウオーカー(巨人→ソフトバンク)、C・ポンセ(日ハム→楽天)、N・タリー(広島→楽天)らが、国内球団に横滑りした。
 中日、横浜(現DeNA)、日ハムを指揮した近藤貞雄監督(故人)からこんな話を聞いたことがある。
「外人選手は開幕からガンガンやってもらないと困る。順位がほぼ決まった秋ごろになって活躍されたって、なんの意味もないよ」
 新外国人選手を取るのに比べ、他球団で実績を残した選手を獲得するのはリスクが少ない。活躍も計算もできる。昨季は巨人からロッテに移籍したG・ポランコが本塁打王になった。こうした傾向はますます強くなりそうだ。
 プロ野球の歴史は外国人選手の活躍(特に打者)の歴史でもあるが、そうした時代は遠くなりつつある。(了)