第74回「塁を全て埋めろ」(島田 健=日本経済)

◎ザ・野球の唄
▽少しベタ
歌詞は「野球のボールとバットを手にして生まれた 父親は彼が立てるようになるやバットを振らせた 球場に立つや打席の王となった」で始まる。投手ではなく打者だが、まるで「巨人の星」の星飛雄馬のようである。「目をボールに集中すると 投手の運命を決める 次打者席に立つ度に 塁を全て埋めろと叫ぶ」。満塁で打席に立ってグランドスラムを放ち、観客を沸き立たせるというのだ。直球の野球讃歌で演歌のように少しベタでもある。
▽カントリー流
唄ったのはウイスキーフォールズという米国のカントリーロックバンド。ギター、ボーカル、キーボードをこなすバック・ジョンソンなど一人で活動しているミュージシャンたちをリーダーのセブン・ウイリアムズが集めた4人組。2007(平成19)年に結成されて、一時は有望グループと認められたが11年には解散した。普通の曲でまあまあのヒットも2曲生まれたが、球界の方で名を残すことになった。発表した07年と翌年のワールドシリーズ中の放送ランキングではともに55位にランクされた。
▽怪しい表現
原題は「Load up the bases」(塁を全て埋めろ)、副題は「The baseball song」。まさに野球の唄であるが、サビのコーラスの部分に少し問題があるそうだ。「I’m gonna knock one out」(一人をノックアウトするぞ)だが、この中に英国圏やオーストラリアでマスターベーションをするという比喩が含まれているのだ。ここが流れるとその国出身の人たちの周りでざわめきが起こる。振り返ってみるとボールとバットを手に生まれたという冒頭も、勘繰ると男の世界を表しているように見えるのは考え過ぎか。
検索は「Whiskey Falls Load up the bases」(了)