「記録の交差点」(10)-(山田 收=報知)

第10回 中村剛也(西武)⑤
 6度の本塁打王、4度の打点王に輝き、この2部門通算記録で現役トップ(471本塁打、1342打点)を突っ走る中村。一方で長距離砲として宿命ともいえる記録保持者でもある。それは三振。通算2042試合で2066三振。歴代1位であり、唯一2000三振をマークしている。1試合あたり1.011個である。通算三振上位(というのか)40人で唯一、1試合1個以上を記録している。
 通算1500三振以上(14人)の面々を、1試合当たりの三振数で眺めてみると、②0.988 タフィー・ローズ(通算1655)③0.836清原和博(1955)④0.807広澤克実(1529)⑤0.790松田宣浩(1520)となっており、中村の桁違いの凄さ(?)が分かる。但し、ラルフ・ブライアントが733試合で1186個、1試合当たり1.53個と、この部門の帝王ぶりを発揮しているが…。
 三振といえば、一般的にはマイナスイメージが付きまとうが、考えてみれば凡打と一緒だ。中村は、三振も多いものの、一発長打の魅力を秘めた打者ということができる。事実、本塁打王、打点王の2冠を獲得した3シーズン(2009、11、15年)は、いずれもリーグ最多三振で、三振王を加えた“3冠”を手にしている。
 実はこの3冠、なかなか獲得できないのである。2リーグ分立の1950年以降で調べてみると、63年の野村克也(南海)、91年O・デストラーデ(西武)、93年R・ブライアント(近鉄)、98年N・ウィルソン(日本ハム)、09年T・ブランコ(中日)しかおらず、トータル6人で8度。複数回は中村のみだ。
 かつて、中村は日刊スポーツのインタビューに「基本は三振したくない。でも崩されて当てに行くようなバッティングはしたくない。
でも当てたらヒットになる確率が上がる。難しいですね」と心境を明かしている。そこには、「打率よりホームラン」という思いが透けてみえる。ホームランか三振か、が中村の魅力の一端でもある。
 中村の三振にまつわるデータを見てみると、年間100三振以上のシーズンは、12度で、これはT・ローズと並びタイ。1三振にかかる打数で表す三振率は3.37(ローズは3.79)。1シーズン自己最多は172(2015年)で、歴代8位。ちなみに1位はブライアントの204(1993年)で、2、3、5位も彼だ。4位は村上宗隆(ヤクルト)の184(2019年)で日本人最多である。付け加えると、6位は2人で、岩村明憲(ヤクルト・2004年)と佐藤輝明(阪神・2021年)の173と続いている。
 予断を持って、1試合最多三振(5)にも、名前を連ねているだろうと思っていたら、中村はいない。若菜嘉晴(阪神・79年)ら20人が記録しているが、中村は4が自己最多。といっても、9回試合で13度、延長戦で3度マークしている。中村がめくってくれた三振のページを次回も覗いてみる。=記録は23年シーズン終了時点=(続)