「たそがれ野球ノート」(10)-(小林 秀一=共同通信)
◎報道しなかった既存メディア
ソウルでのドジャース、パドレスの開幕シリーズはMLBのアジア戦略で実現したものだが、韓国でこれほど大谷翔平の人気が高まっているとは思わなかった。かつて「冬のソナタ」のぺ・ヨンジュが日本列島に火をつけて韓流ブームを巻き起こしたが、国境を越えたフィーバーぶり(ちょっと古いか)はそれと似ている。
財団法人新聞通信調査会が2月中旬に発表した「諸外国の対日メディア世論調査」によると、韓国の日本に対する好感度は過去最高の44パーセントを記録しているが、大谷の存在は少なからず影響しているのだろう。朝鮮日報は大谷を「日本最高の外交官」という関係者の発言を紹介している。
さて、大谷の結婚報道はめずらしい展開となった。本人が公表したのは2月29日だった。で、お相手はとなるわけだが、既存の新聞・放送メディアからは一切続く報道がない。不思議と週刊誌も静まりかえっているではないか。その一方で、SNS上では公表直後から「田中真美子さん」の名前が広く伝えられた。私にまでも音声付映像が送られてきたほどだ。見直してみると日付は3月3日だった。
ドジャースが公表したのは3月15日。海外メディアを先頭にようやく記事化され、真美子夫人はソウル遠征に同行してようやくデビューすることができた。一体この展開はどういうことか、さあ取材。まだ顔がつながっている野球デスクに電話をかけると「両サイドが頭から否定するので人定ができない。書くに書けないのです」。某週刊誌デスクは「書いて大谷の心証を害してしまったらどうしようもない。自社が悪役になって世論から非難されるのも怖い」と忖度をうかがわせた。
いずれにせよ大谷は充実したシーズンを迎え、活躍が大いに期待できると思われた。ところが、開幕2戦目、3月21日の夕刊段階(今はこう言わないか)、とんでもないニュースが飛び込んできた。水原一平通訳の解雇。今後どういう道筋を経ていくのか。しっかり見ておかねば。ジェットコースターに乗せられて、こっちもたそがれているわけにはいかんぞ。(了)