◎日米通算記録の独立(菅谷 齊=共同通信)

大リーグが黒人リーグの記録を組み入れ、新たな記録を整備した。このニュースを日本のプロ野球界はどのように聞き、反応するのだろうか。
 通算打率とシーズン打率の1位は黒人リーグのジョシュ・ギブソンになった。3割7分2厘と4割6分6厘である。輝いていた“ジョージア・ピーチ”ことタイ・カッブが2位になるという衝撃的な変更だった。ギブソンは長距離打者だったことから「黒いルース」と呼ばれた。そのベーブ・ルースの通算長打率とOPS(出塁率+長打率)の両部門でも1位となった。タブーともいわれたルースの記録に踏み込んだのだから驚きでしかない。
 日本のプロ野球はオフィシャル・ベースボール・ガイド(市販)に選手記録が載っている。このなかに日本選手の大リーグ記録と日米記録を合算した通算記録は載っていない。今回の大リーグの影響を受け、また日本人大リーガーの活躍もあるところから「日米通算公式記録を作ろう」という声が上がるのではないか。
 そうなった場合、通算安打で異変が起こる。日本は張本勲の3085安打でトップ。日米となるとイチローが4367安打(日本1278安打、米国3089安打)となり、こちらが大きくクローズアップされるかもしれない。
 簡単に日米通算記録の掲載とはならないだろうが、現在の日本記録とは別項で日米通算記録を公式記録とするときが来たのかもしれない。200勝、2000安打達成者がメンバーで始まった名球会は、すでに日米通算記録を採用している。投手でいえば、最近ではダルビッシュ有が200勝に到達したし、これまで野茂英雄や黒田博樹が日米合算でメンバーとなった。
 大リーグは今回の決定を「黒人リーグを大リーグと同等と認めた」としている。日本人大リーガーの成績を見ると、現在の日本球界は「大リーグと同等に近い」といっていい。とりあえず日米通算記録を別項でつくり、時期を待って「日本は大リーグと同等」に格上げして現在の日本のみを「日米記録」とするときが必ず来る。ファンは間違いなくそれを望む。
 NPB(日本プロ野球機構)がどう対応するか見ものである。(了)