山下大輔インタビュー(聞き手 菅谷 齊=共同通信)
▽参考になるイチローの調整法
-視察したところは?
山下「アリゾナ州です。私がかつてコーチをした2009年からドジャースは、いまアリゾナがキャンプ地ですから。ドジャースといえばかつてはフロリダ州ベロビーチ。オマリー家から経営権が移ってからアリゾナに変わりました」
-その後の移動は?
山下「マリナーズを見に行きました」
-イチローが復帰した時期ですね
山下「私がドジャースで指導したデイー・ゴードンがマリナーズに移籍したので会いに行ったんです。内野手としてプレーしていたんだけれども、今年は外野手で1番ですね。このゴードンのあこがれがイチロー」
-そのイチローが戻ってチームメートに・・・
山下「イチローの復帰のとき私がそこにいたというわけです」
-イチローの珍しい調整方法が日本で話題になりましたよ
山下「2球場を掛け持ちして打撃だけ、という方法ですね。イチローほどの実績のある打者ならではと思います。なにしろ3000安打ですから。このやり方はグラウンドの配置が関係するんですね。大リーグのいい環境だから可能なのであって日本ならソフトバンクの宮崎キャンプならできると思いますね」
-それにしても1打席終わったらすぐ移動というのは大変ですね
山下「グラウンドはすぐ隣ではなかったので、本人よりも機材を持って走る取材カメラマンがつらかったと思いますね(笑い)」
▽ファンの注目度は抜群、日本のルース大谷
-大谷はどんな状況で練習、調整していましたか
山下「注目度は大変なものでしたね。大谷が移動するとファンも動く、という感じでした」
-やはり二刀流ということで・・・
山下「そうですね。なにしろ“日本のベーブ・ルース”という触れ込みですから。米国でベーブ・ルースといえば最高の選手という意味ですから、関心の高さは想像以上でした」
-打者大谷をどう見ましたか
山下「やはりスピード対策をしていたようです。球威に詰まらないための調整ですね。と同時に変化球対策でしたね」
-具体的には・・・
山下「イチローがメジャーに行ってすぐ振り子打法をやめました。スピードに詰まると判断したんだと思いますが、それを見抜くところが彼のすごいところなんですね。大谷もノーステップで打っていました」
-投手大谷はオープン戦で苦労していたようですが・・・
山下「気になったのはコントロールが定まっていないことでした。下半身がどっしりしていないように見えました」
-走り込み不足ですか
山下「昨年の故障が影響しているのかも知れませんね」
-対策は?
山下「走り込みで下半身が落ち着けば、あのスピードですから本来の姿に戻るのでは、と見ています」
-あと日本の選手の印象はどうでしたか
山下「ドジャースの前田健太は安定していましたね。やはりメジャーで2ケタ勝利を挙げている投手は違う。勝てる投球を知っているということです」(了)
後記 視察から帰国して間もない3月の最終週にインタビューした。当方の都合に合わせてくれた。話を聞いたのは母校、慶應大(東京・港区)で。丁寧な言葉遣いは現役時代と全く変わらない。野球人としては稀なるジェントルマンである。日米の野球を熟知する貴重な存在といっていい。
山下大輔略歴 1952年3月、静岡生まれ。清水東から慶應大に進み、3連覇に貢献。首位打者1度。主将。74年、ドラフト1位で大洋(現DeNA)入り。球界を代表する遊撃手となり、ゴールデングラブ賞を8年連続受賞。2003年に横浜監督。09年から大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの傘下チームで守備コーチ。現在、解説者。