「大リーグ ヨコから目線」(荻野通久=日刊ゲンダイ)
◎さまざまな取材記者への対応
大リーグが開幕して1か月ほどが経過した。二刀流の大谷翔平がアメリカでも大きな話題となり、大勢の日本人プレスが取材に押しかけているようだ。普通、日本の報道陣がシーズンを通してではなく、スポットでメジャー球団に取材に行く際は、球団の広報担当に取材日を知らせてメールで申請する。
▽親切だったパドレス
私もいくつかの球団に取材を申し込んだが、対応は球団によってかなり異なる。もっとも親切だったのはナ・リーグ西地区のサンディゴ・パドレス。2011年にダイヤモンドバックスの本拠地(アリゾナ州フェニックス、チェイスフィールド)でのオールスター取材の帰りにパドレスの本拠地ペトコパークに寄った。
取材の目的は特になかった。それでもサンディゴに行ったのは西海岸のチームがほとんど遠征に出ていて、本拠地で試合があったのはパドレスだけだったからだ。球場入口の受付に行くと、担当者が「メールを受け取っています。これが取材パスです。車で来ましたか?それなら駐車場がありますので、駐車券をどうぞ」と言われた。「ホテルからタクシーで来た」と伝えると、それではと受付からプレスルーム、グラウンドにつながる通路を丁寧に教えてくれた。
プレスルームに行き、荷物を置いてパドレスベンチに行った。ちょうどパドレスの練習が始めるところだった。私に気がつくと、すぐにグランドにいたパドレスのロゴ入りポロシャツを着た人がやってきた。受付から「取材の日本人プレスが到着した」という連絡があったのだろう。
▽いつでも声をかけてください
「広報担当の○○○です。今日はなんの取材ですか?誰か話を聞きたい選手はいますか?」と聞かれた。パドレスではかつて大塚(晶文、現中日派遣コーチ。2004~05パドレス在籍)がリリーフとして活躍していたが、すでに退団。特に取材の目的はなかったので困ったが、「2006年の第1回WBCで日本が世界一になった球場なので、今後の取材のためにも一度見ておきたいと思い来ました」と話した。
「分かりました。ゆっくりご覧になってください。私はグラウンドにいますから、何かあればいつでも声をかけてください」。そ言うと広報担当はグラウンドに戻った。
それからベンチで練習を見ていると、選手の1人が戻ってきた。私を見ると「今日はだれの取材?オレか?」と言われた。事情を説明すると「わざわざ日本から」と感心された。そしてベンチに置いてあるスナックを指すと「お腹空いたら食べなよ」と勧められた。
大リーグ中継をしているNHKや日本人選手のいる球団に常駐記者を置いている媒体と異なり、パドレス関係者は「日刊ゲンダイ」は名前すら耳にしたことがないはずだ。それがこの応対だ。残念ながら観戦した試合は記事にはならなかったが、今でもパドレスと聞くとこのときのことを思い出す。
▽ドジャース広報室に呼ばれて
逆のケースがドジャースだった。正確な年は忘れたが、やはり広報担当に事前にメールを送った。当日、受付に行くと「知らない。聞いてない」と係員がいう。取材申請のメールのコピーを見せると「おかしいな」と電話で広報に確認してくれた。
「広報の部屋に来てくれ」と言われて行くと「申請は届いていない」と広報担当はいう。コピーを見せ、送信済みのスタンプが押されているのを説明すると「分かった」となった。取材パスを渡されると思ったら、「報道のパスはプレス用の駐車場の受付で発行するから、そこへ行ってくれ」とのこと。
プレス用駐車場は球場の敷地の一番高いところにある。そこまで上がっていってやっとのことで取材パスを受け取った。ドジャースは人気球団。毎日、多くの取材申請があるはず。日本からの申請はどこかに紛れてしまったのだろうか。
思わぬ親切に感動したり、逆に困惑したり。いろいろとあったが、それを含めてメジャーリーグの取材は楽しく、いい思い出である。(了)