「今年、プロ野球初の4割打者は誕生するか?」―(荻野通久=日刊ゲンダイ)

▽100打席以上で唯一4割の近藤

今年こそプロ野球初の4割打者の誕生が期待される。日本ハムの近藤健介がその打者だ。
 近藤は5月1日に故障で二軍落ちするまで23試合で打率3割9分2厘。2週間後の15日にケガから復帰、再び一軍に合流した。 
 昨年は231打席で167打数69安打、4割1分3厘。度重なるケガで戦列を離れることが多く、出場試合は57にとどまり、規定打席に達してなかった。それでも日本プロ野球機構によると、100打席以上での打率4割はプロ野球の歴史で近藤1人だ。
 大リーグの4割は1941年のテッド・ウィリアムス(レッドソックス、4割0分6厘)が最後だ。日本のシーズン最高打率は86年のランディ・バース(阪神)の3割8分9厘。
 4割打者が出ない理由については、「打者のレベルが上がり選手の均質化して突出した選手が生まれにくくなった」「変化球の球種が増え、投手の技術が上がった」「長く誕生していないので打率4割に近づくとファンやマスコミが騒ぎ、より打者にプレッシャーがかかる」などいわれている。
 

▽落合、イチローが語る4割の条件

打率4割について三冠王3度の落合博満が親しい野球関係者にこう話したという。
 「シーズンに10日から2週間くらい、どんなボールでもヒットにできると思える期間がある。ゾーンに入った感じ。それがシーズンに3回くらいある。それが4回あれば4割を打てる」
 またイチローはかつて冗談交じりにこう言っていた。
 「一塁ベースがあと10センチ、ホームプレートに近かったら4割を打てる」
 それだけ一塁ベースが近くなれば、俊足を生かした内野安打が増えたということだろう。
 プロ野球では巨人のウオーレン・クロマティが89年に97試合まで打率4割(4割0分1厘)をキープしていたことがある。130試合制で規定打席は403。97試合の時点で規定打席に達していたが、クロマティはその後もゲームに出続け、結局、3割7分8厘でシーズンを終えている。
 この3人だけに共通した記録がある。打率3割6分0厘以上を打ったシーズンが2度あることだ。それだけのヒットメーカーをもってしても4割打者は険しい道なのだ。

▽最大の敵は故障

近藤は横浜高から日ハムにドラフト4位で入団して7年目。左打ちで小柄ながら(173センチ、83キロ)パンチ力に加えて、広角に打てる高い打撃技術がある。足も決して遅くはなく、昨年57試合で60四球と選球眼もいい。高卒4年目の2015年には打率3割2分6厘で打撃10傑の3位。早くから安打製造機の片鱗を見せている。怖いのはケガだ。
メジャーでは大谷翔平(エンゼルス)が18年のベーブ・ルース以来の2桁勝利、2桁本塁打の記録達成かと騒がれているが、今季は日本でも大記録が生まれるかも知れない。