◎200勝投手は絶滅種-(菅谷 齊=共同通信)

名球会の悩みが重い。200勝投手の期待が年々薄れていくからである。
 会発足のとき、打者2000安打に2投手200勝が入会資格だった。投手には400勝あり、300勝あり、と豪勢だった。それが今では「どなたか、頑張って」の状態で、日本球界プラス大リーグの勝ち星も、望みがあまりない。
 2021年が終了した時点で、日本での200勝は24人。
 候補者は、というと実に心細い。ヤクルトの石川雅規が177勝であと23勝がトップ。続いて楽天の涌井秀章150勝。昨年4勝の石川は元気だが、今季の達成はまず無理。
 今後の200勝は、名球会入りの条件でもある大リーグとの合算に頼るしかない。
 楽天の田中将大は昨年まで181勝(日本103勝、大リーグ78勝)。200勝まで19勝で今季を迎え、初登板で勝っているからシーズン終盤に成就となるかもしれない。
 続いてパドレスのダルビッシュ有は昨年まで172勝(日本93勝、大リーグ79勝)。あと28勝だが、来年の楽しみである。
 大リーグでの勝ち星が多かった唯一の投手が201勝の野茂英雄。日本での78勝を50勝近く上回る123勝を稼いだ。203勝の黒田博樹も大リーグでの79勝が大きかった。
期待された松坂大輔は昨年で力尽きた。日本で114勝、大リーグで56勝。あと30勝だった。本人も200勝が最終目的だったと思う。だからこそ16年にソフトバンクに入り、残る力を振り絞った。18年の中日で6勝を挙げたものの、以後は登板すらままならなかった。
 かつてのように、先発投手は「完投が当たり前」ではなくなり、連投などもってのほかという時代である。400勝投手の金田正一のように「ワシが投げなければチームが勝てん」と言ってリリーフ登板を買って出るようなことは、もうないだろう。
 だからイニング数も少ない。年間200イニングを投げる投手も減った。汗をかきかき投げる姿も見ることがない。健康管理がそれらを防御している。名球会にとって投打のバランス維持は難しく、打者多数の片肺飛行になるのは間違いない。
 200勝投手は“絶滅種”になってきている。(了)