「しゃべって、出会って」(1)-(近藤 雄介=フジテレビ)

◎あんなだったのに…
2013(平成25)年2月、バットからはバコッ!ボコッ!しか聞こえませんでした。ぜひ見ておきたかったんです。彼のプロ1年目のキャンプを。
日本ハムの1軍は沖縄・名護でキャンプ。彼はさらに北の2軍キャンプ地、国頭(くにがみ)にいました。私は昼過ぎに着きました。
その日の彼は投球練習をしませんでした。残念でしたが、早く行っても投げる姿は見られませんでした。さがしても彼の姿がありません。
夕方近くになって見つけました。ウエートトレーニング場にこもっていたのかもしれません。グラウンドにたった一人で彼がいました。バッティングケージ、マシンに向かっています。
 観客席から見つめました。私以外に周りに誰かがいた記憶がありません。
 どの打球も彼の足下近くからボテボテと転がって行きました。ボールが尽きれば自分で拾い集めてマシンに流し込んでいました。誰の手を借りなくてもボールはすぐに集まりました。遠くまで飛んだ打球はほとんどなかったからです。
あまりにも意外でビックリでした。とにかく手足は長かった。そして、バットがやたらと太く見えました。
 ガッカリしながら動画を撮りました。快音の場面を待ったんですが、途中であきらめました…。
あの時の、あんなだった〝大谷翔平〟はもう電源が入らない私のiPhone7の中に眠っています。(続)