「大リーグ見聞録」(79)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎大谷が達成した「40本40盗塁」の面々は個性派揃い?
▽薬物疑惑にスキャンダル
ドジャースの大谷翔平が現地8月23日(日本時間24日)、レイズ戦でメジャー史上6人目の「40本塁打40盗塁」を達成。126試合は史上最速で、史上初の「50本50盗塁」の快挙も期待されている。
過去の5人の達成者を見ると、問題児というか、なかなかキャラクターが濃い。最初のホセ・カンセコ(1988年、アスレチックス、42本40盗塁)は2005年に暴露本を出版。自らアナボリックステロイドの薬物使用を公表。さらにMLB選手の85%が使用または使用していたと語り、MLBに激震が走った。
バリー・ボンズ(1996年、ジャイアンツ、42本40盗塁)もやはりステロイド疑惑が取り沙汰された。「俺がMLBナンバー1の選手」と公言。「オレ様キャラ」からか、チームメイトから浮いていた。ジャイアンツ時代はやはり主力のジェフ・ケントと試合中、ベンチでケンカをしたほどだ。
2007年7月、サンフランシスコでのオールスターを取材した。試合前日、出場選手はインタビューを受ける。イチロー(当時マリナーズ、ファン投票で出場)がサンフランシスコの印象を聞かれ、こう答えたのを覚えている。
「サンフランシスコですか?うーん、ボンズさんの街ですかね」
チームだけでなく、市にまで「オレ様キャラ」が浸透していたのだろうか。
アレックス・ロドリゲス(マリナーズ、1988年、42本46盗塁)は薬物使用(2014年162試合出場停止)に加え、スキャンダルでも有名。現役時代、マドンナとの浮名を流したのはよく知られている。ストリッパーを遠征先のホテルに呼んだり、試合中にスタンドの最前列に座っていた女性を口説くなど、この種の報道には事欠かなかった。
▽ソリアーノの思い出
アルフォンソ・ソリアーノ(ナショナルズ、2006年、46本41盗塁)は1996年に広島入団。在籍2年、わずか2本のヒットを打っただけで、ヤンキースに移籍した。退団、移籍に際しては球団と代理人との間でトラブルになった。
移籍後はメジャーの複数球団で活躍。2013年のシーズン中、MLBで1998本目のヒット打った。日米通算で2000本安打。名球会入会の条件をクリアした。とはいえ、プロ野球では安打はたった2本。例えばイチロー(日本951本、米国2536本)や松井秀喜(同139本、1253本)と事情が違う。それでも資格があるのか、当時、名球会の理事長だった柴田勲氏を取材した。
「日本でヒットが2本だって関係ないよ。日米通算で2000本を打っているのだから。資格をある。歓迎するよ」
だが、残念ながらソリアーノから入会の申請はなかったようだ。
昨年(2023年)のロナルド・アクーニャJR(ブレーブス、41本73盗塁)はまだ記憶に新しい。
わずか6人の「40本40盗塁」に日米でプレーした選手が2人。3人目の誕生を期待したい。(了)