「勝手にスポーツコラム」(3)-(船原 勝英=共同通信)

◎好感度で対極の大谷とソト
 大谷翔平が絵本作家としてデビューする。愛犬のデコピンが主人公で、開幕戦の始球式を舞台に、家に忘れてしまったお気に入りの「ラッキーボール」を球場まで届けようと奮闘するというストーリー。来年2月に全国の主要書店、オンライン書店で発売するそうだ。マイケル・ブランク氏と共同著者で書き下ろしたとあるので、ポプラ社からは日本語で、その後は英語版が米国で出版されるのだろうか。
 参りますよね。アスリートとしてこれ以上はない活躍をし、本業以外でこんな素晴らしいパフォーマンスがあるなんて…。
 読者は3歳から7歳までの子どもたちが対象というが、その家族からデコピンのファンまで幅広い層の人々が手に取りそうだ。絵本による収益は全て慈善団体に寄付し、ポプラ社も売上の一部を動物保護団体に寄付するという。大谷とデコピンの好感度が、またまた爆上がりすることになるだろう。
それとは別に、MLBの公式サイトが2025年に最も関心が寄せられた選手のトップ5を発表し、大谷翔平が1位に輝いた。「ショウヘイ・オオタニは2025年で最もメンション(SNSでは特定の相手へのメッセージを指す)された選手だ。貴方は今年どの選手を最もメンションしましたか? #SpotifyWrapped」と紹介している。
2位には首位打者とMVPのアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)、3位は本塁打、打点の2冠に輝いたカル・ローリー捕手(マリナーズ)、4位にはワールドシリーズMVPの山本由伸投手(ドジャース)、5位にはサイ・ヤング賞のポール・スキーンズ投手(パイレーツ)が選ばれた。
 MLBはMVP発表直前には「2025年の年間レジェンダリー・モーメンツ賞」にも大谷翔平を選出している。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦での「3本塁打、10奪三振」が対象。「私たちは地球上で最も素晴らしいShoの最前列に座っていた」と偉業を称えた。
 どんな球団もここで上位ランクされたような選手が欲しいはずだが、1000人前後はいるメジャーリーガーの中でも彼らは選りすぐりの存在。圧倒的な競技力に加え、そろってチームへの献身性や人間性も高く評価されている顔ぶれだ。若いスキーンズを除けば年俸数十億円クラスの高額プレーヤーばかりとはいえ、金さえ積めば獲得できるわけではない。
 MLB球団でも近年、選手を評価する際に「人柄」を見極めることが重要になっているのだという。ナイスガイである必要はない。プレーヤーとしてあるべき姿、負けず嫌いでチームの勝利を最優先、そのための努力を惜しまず、かつチームメイトとも争いを起こさない。すべて本物のプロに求められる要件ではあるが、特に長い契約になればなるほどこの部分が重要視される。「人間性」の要素を数値化しているチームもあるそうだ。データ解析のスペシャリストが重視される時代にあって、人間くさい要素を評価する部門で、ここはスカウトたちの領分。その選手の元監督、チームメイト、出身大学のコーチなどあらゆるソースとコミュニケーションをとり、その選手がどんな人間かを判断し、獲得に関してフロントに進言する。
ドジャースがこの部門を重視していることは容易に想像できる。大谷、山本はもちろん、フレディ・フリーマン、ムーキー・ベッツのMVPコンビもプロ中のプロで、なおかつ人間性も高く評価されている。今季限りで引退した生え抜きの大エース、クレイトン・カーショーや、マックス・マンシー、チームリーダーのミゲル・ロハスやキケ・ヘルナンデス、トニー・エドマンら脇役に至るまでチームへの献身性が高く、人柄の良さも感じさせる。その昔、野茂英雄が入団した当時のラソーダ監督が「俺の体を切ってみろ。ドジャーブルーの血が流れるぞ」と口にしていたように、これはチームのよき伝統なのだろう。
そのドジャースとワールドシリーズを戦ったブルージェイズは、前年オフに40歳のマックス・シャーザー投手と1年契約を交わした。ナショナルズとレンジャーズでワールドチャンピオンに輝くこと2度、サイ・ヤング賞を3度受賞し、通算221勝、3489奪三振(数字は2025年終了時)。カーショーとプロ入り同期、殿堂入り確実の大投手だ。ニックネームは「マッド・マックス(怒りのマックス)」。負けず嫌いで向上心の塊、登板日には誰も声を掛けられない空気感を持つ孤高の大投手である。
獲得の際にチーム内で浮いてしまうのではないかという懸念もあったそうだが、シュナイダー監督は開幕前から「試合前の準備の仕方から試合中における打者への対応など、マックスは他の選手にとって素晴らしいお手本となってくれている。クラブハウス内でもいいチームメイト。彼の存在はうちのチームにとって大きな財産だ」と高く評価していたそうだ。
シャーザーといえば、マリナーズとのリーグ優勝決定シリーズの場面を覚えておられるだろう。交代を告げにマウンドへ歩んだシュナイダー監督に対し、鬼の形相で一喝すると、監督はすごすごとベンチに引き返えした。「殺されるかと思った…」試合後にこうコメントしたシュナイダー監督だったが、しっかり後続を打ちとったシャーザーに文句はなかったろう。選手と監督との関係ではMLBでもまずあり得ない場面だが、シャーザーの性向と迫力、そして実績が誰をも納得させたのだろう。
対照的とは言わないまでも、評判がよくないのがメッツの主砲フアン・ソトだ。前年オフ、大谷翔平を上回る15年7億6500万ドル(約1200億円)でヤンキースから移籍。前半戦は不振に喘いだものの、終盤は実力を発揮して43本塁打、105打点、OPS.921と堂々たる成績を挙げた。しかし、チームが最終戦で敗れてポストシーズン進出を逃したことで、超高給取りは批判の的になった。しかも、プレーオフ開幕前にはアカプルコでリゾートを楽しむインスタグラムをアップし、火に油を注いだ。
プライドが高く「自分が史上最高の打者」と公言する自信家だ。確かに出塁率が高く、MVP投票でもナ・リーグ3位にランクされた超一流ながら、「利己的で計算高い」と評判がよくない。同じようにプロ意識は高くても、大谷翔平とは対極にある。それでも、MVPを獲得してワールドチャンピオンになれば評価されるのだろうが、結果が出なければ叩かれるのが米国。ドジャースが決して獲得に動かない典型的なタイプの選手だ。
先ごろ行われたニューヨークの市長選挙では、アーロン・ジャッジに11票が投じられたそうだ。米国の選挙ではこの種の“冷やかし票”があるそうで、メッツのピート・アロンソなど何人かのアスリートにも票が入ったが、ソトは得票ゼロだった。ニューヨークのファンからもよほど嫌われたのだろう。しかし、そんなことを気に掛けるようなソトではない。移籍2年目の来季は、打撃部門で大谷のライバルになるほどの活躍をするのではないか。
好感度の塊のような大谷翔平とその対極にあるフアン・ソト。この2人のシーズンがどうなるのかも、来季のMLB観戦の楽しみのひとつだ。(了)

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