「スポーツアナウンサーの喜怒哀楽」(19)-(佐塚 元章=NHK)
◎中学部活の地域移行、野球部はどうなる?
野球人口減少の危機が叫ばれてから久しい。歯止めがかからない。もちろん少子化が根底にある。私が最も危惧しているのは、地域にある公立中学の部活、野球部員の数である。
全国中学校体育連盟の調査によると、2024年度の加盟校は7706校、部員は12万9805人、10年前の14年は8784校、22万1150人だったから、驚くべき激減である。何といっても義務教育の中で行われる中学部活は生涯スポーツの出発点であり、高校、大学、社会人、プロ野球、つまり日本の野球界の地盤である。当然、反論はあるでしょう。「ボーイズ、リトルシニア、ポニーなど」中学世代の団体が高校野球を支えているではないかと。
私の住まいの目の前でボーイズのチームが土日練習しているが、高い月謝を払って父母がお茶当番をしている。いつも恵まれた家庭の子供たちだなあと思っている。彼らは全国の強豪私学、いわゆる野球校に進学していく。そんな現状のなかで、スポーツ庁が「中学部活の地域移行」を強力に推進している。23年から3年間は改革推進期間と位置づけている。発端は先生の勤務時間の問題「働き方改革」である。すでに千葉県柏市、埼玉県白岡市、長崎県長与町など全国各地で試行されている。
私の故郷、静岡市も今の中学1年生が2年後夏の大会が終わった段階で中学部活は廃止すると市長が明らかにした。しかし、地域のクラブチームに移行と言ってもタダではない、有料である。グランドはどこで?送迎は誰が?事故責任は?指導は誰が?教育的センスは?都市部、山間地の地域格差は?難問山積である。一番の心配は会費が払えず、野球をしたい子が野球をできないことである。家庭の経済格差がスポーツにも反映されてしまうのである。
浜松市の野球クラブ「ノバエーラ浜松(ラテン語の新しい時代と遠州弁えーらの造語)を紹介したい。中学の部活動に限界を感じた教員が退職し、グループで25年4月会社を設立し学校外で軟式野球、ソフトボールの指導を始めた。社員は8人、小中学生の会員は20人である。GMの藤田裕光さんは中学、高校野球の名監督であり校長も務めた教育者である。浜松市も協力し、2年後の中学部活のスムーズな地域移行の実験的ケースとして行政から期待されている。全国の教育委員会から多くの人が視察に訪れている。
同年6月に、日本高野連と日本野球機構は野球人口減少対策としてキッズファーストアクションなどで連携を発表した。それは結構なことだが、実は最も大事なことは野球界の基盤である公立中学の部活廃止後をどうサポートしていくかである。全日本野球協会、地方軟式連盟も直近のテーマとして具体策を考えてほしい。
さらに恐ろしいのは、将来は高校部活も廃止、地域移行にしたいというのがスポーツ庁の構想であるのである。(了)
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キャッチボールをするところも無いです。都会は
野球をやる機会が都会の子は奪われてしまい、甲子園は盛り上がるけど根はどんどん細くなっているのを
実感します。
資本主義は成長、成長で格差が広がり、この先いろんなものを奪われていかれるのが
文章を読んで実感、恐怖に感じました。
谷治さんご意見ありがとうございました。中学部活の(スポーツ、文化部)の撤退はよき日本の文化振興を
ないがしろにするものです。野球界にとっても死活問題です。家庭の経済格差、地域格差を助長します。
もう後がないのですが、せめて野球界は各団体が真剣に考え、協力し打開策を講じて欲しいと思います。佐塚元章(元NHKアナ)