「大リーグ見聞録」(97)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎アストロズの新たな試み「the Word of the Day」
▽8か国、4言語
メジャーリーグでは18か国から250人以上の外国人選手(米国出身以外の選手)がプレーしている(2025年開幕時)。選手は言葉、食べ物、習慣、歴史、音楽など、それぞれ異なった文化を背景に持つ。それだけに選手、首脳陣、スタッフ間の意思疎通は大きな問題だ。そんな中、アストロズのキャンプで興味深い‘試みが行われている。MLBのHPが伝えている。
アストロズはもともと外国人選手が多かったが、今季、今井達也と台湾出身のテン・カイウェイが加入。米国、ドミニカ、プエルトリコ、メキシコ、キューバ、ベネズエラ、日本、台湾と8か国の選手が所属することになった。言語も英語、スペイン語、日本語、中国語が飛び交う。そこでキャンプ中、ロッカールームに毎日、4つの言語でひとつの単語が掲示されることになった。
「the Word of the Day(今日の言葉)」として、例えば「野球」なら「baseball」(英語)、「beisbo」(スペイン語)、「bang-qui」(中国語)、「yakyu」(日本語)。他にも「Hello」「friend」「food」などの毎日、違った単語が4言語でロッカールームに表示される。
今井も「毎日、単語を蓄積している」と話している。選手が異なる言葉を覚え、関心を持つことが、互いの文化をつなぐ橋となり、チームの一体化、強化につなげる。それがフロントの狙いだ。
▽人と人をつなぐ力
大リーグでは試合前と試合後、一定の時間、報道陣はロッカーで選手を取材できる。私も10チーム以上のロッカーで選手の話を聞いた。日本人大リーガーには日本語で。それ以外の選手には拙い英語で。その時、聞きなれない言葉を度々、耳にした。アストロズのロッカーはさぞかし賑やかなことになると想像する
2010年に中央大からインディアンズ(現ガーディアンズ)のマイナーチームに入団した、中村尚史からこんな話を聞いた。
「ルーキーリーグのときに、チームで英語の授業があった。対象はアメリカ以外で生まれた選手。中南米出身者や日本人だった」
前田健太(現楽天)のタイガース時代(2004~05年)、バッテリーを組む捕手はユニホームのポケットに小さな紙を忍ばせていた。そこには日本語で「頑張れ」「落ち着いて」などの文字が書かれていた。ピンチでなるとマウンドで捕手が紙を取り出し、日本語を読んで前田を励ましたり、冷静にさせたりしたという。
いずれもコミュニケーションの大切を示しているのではないか。人と人をつなぐのは言葉である。アストロズの‘試み’がどうでるか、楽しみだ。(了)

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