新人王の特権-(菅谷 齊=共同通信)

一生に一度のチャンス。それが新人王である。
 タイトルは数多くあるのだが、最高の名誉といえば、新人王とMVPの両方を獲得することといっていい。この両タイトルは記者選考によるものだから、厳密には「選ばれた人」となる。成績プラス人間性が投票に響く。
 新人王はこの最高の栄誉に輝くパスポートを持ったことになる。“新人王の特権”である。
 三冠王を取った野村克也、王貞治、落合博満、松中信彦はいずれもMVPには選ばれているが、新人王は手にしていない(外国人三冠王は除く)。
 同時に両方を獲得した選手がいる。1980年の木田勇(日本ハム)と90年の野茂英雄(近鉄)である。
 イチローは日本ではMVPのみだったが、大リーグのマリナーズ1年目の2001年に新人王とMVPをダブル受賞している。2021年のMVPに選ばれた大谷翔平は新人王のチャンスは永久に来ない。
 日本球界で最初に両方選ばれたのは西鉄の中西太だった。新人王制度ができて3年目の1952年に新人王。4年後の56年にMVPに。同時受賞のチャンスを逃したのが巨人の長嶋茂雄。58年、本塁打王と打点王を取り、打率2位。準三冠王で新人王は取ったが、MVPはエースの藤田元司が選ばれた。
 もっとも新しい名誉獲得者は昨年、MVPに選ばれたヤクルト村上宗隆。2年目の19年に新人王を取った。
 昨年の新人王はセ・リーグが広島のクローザー栗林良吏、パ・リーグがオリックスの先発左腕の宮城大弥。MVPは今後何度もチャンスがある。新人特別賞の牧秀悟(DeNA)らに特権はない。新人王と新人特別賞の違いは、実は逆転のない差なのである。(了)