「セ・リーグDH採用で球界が変わる?」-(山田 收=報知)

第20回 2021年のDHを総括する(1)
 2021年のプロ野球日本シリーズは、ヤクルト、オリックスという2年連続最下位からリーグ優勝を勝ち取ったチーム同士の戦いとなった。類似型の両球団対決らしく、6試合すべてが2点差以内、うち5試合が1点差という“超接近戦”だった。
ご承知のように、ヤクルトが1960年の大洋以来、61年ぶりの前年最下位から日本一の快挙を成し遂げた(オリックスもVなら同様だが)。
 余談だが、大洋の監督は魔術師と呼ばれた三原脩。以前、拙稿で紹介した1973年2月のセ・リーグ監督会議でヤクルト監督として、DH採用賛成論を展開したレジェンドだ。
そんな歴史を持つヤクルトが、2013年から20年まで8年連続でパ・リーグが制していたシリーズV記録に終止符を打った。また、DHが使えるパ本拠地試合で13年第7戦から21年第1戦まで続いていたパの連勝を22でストップさせた。
 2年連続でソフトバンクに4連敗で退けられた巨人・原監督が「セ・リーグもDH制採用を」と訴えたきっかけにもなったシリーズでのパ高セ低の象徴が、21年については、ややぼやけて見えたのも事実だろう。オリックスは①②⑥戦を本拠地で戦ったが、結果は1勝2敗だった。
 このシリーズ、DHに関する限り、両軍とも目立たなかった。
オリックスの安打は第1戦で吉田正が放ったサヨナラ二塁打のみで、代打を含む3人が打席に立ち、通算13打数1安打1打点、打率.077だった。
一方、ヤクルトは交流戦DHで24打数8安打1打点、打率.333だったサンタナを起用したが、11打数無安打に終わったのだ。
日本シリーズでDHが.000だったセのチームは07、10年の中日、15年のヤクルトに続き4度目。1999年で対戦したダイエー、中日両軍が.429をマークしたこととは対照的だ。
 今シリーズ防御率が2.09のヤクルト、2.62のオリックスと両軍とも投手力の高さが目立った。従って打線の大爆発はなく、ヤクルトは打率.213、5本塁打、得点19(1試合平均3.17)。オリックスは.204、3本、16得点(平均2.67)。結果的に投手力を中心としたディフェンスの強さで戦う伝統のセ・リーグらしい野球が勝利した。パのお家芸である爆発力のある攻撃が封じられた印象だ。DHが代表するオフェンスの強さが封じられたシリーズだった。
 あえてオリックスのDH戦略に注文をつけるなら、第6戦で吉田正を過去2戦のDHでなく左翼で起用、モヤをDHに据えたこと。5回2死二塁での塩見の左前タイムリーによるヤクルト先制点は、防げたのでは、というのが私見である。吉田正の肩ははっきり言ってレベルが低い。2年連続首位打者の打撃に比して、守備力の評価は厳しい。1、2戦同様、DH起用で良かったのでは。オリックスは吉田正以外にも、モヤ、ジョーンズとDHタイプの選手が多いチーム事情にも悩まされたのではと、想像する。(続)