「記録とメジャーを渡り歩いた記者人生」(10)-(蛭間 豊章=報知)
◎9月11日、衝撃の同時多発テロ
日本時間2001年9月11日。私は、大リーグの記事を作成していた。独走していたマリナーズがエンゼルスに5-1で勝利し、ア・リーグ西地区優勝へのマジックを2とした、イチローは2試合連続ノーヒットだったなどを記事にまとめて、のんびりと野球デスクの助っ人をしていた。
すると午後9時過ぎ、NHKからハイジャックされた航空機が米ニューヨークの世界貿易センターに激突の衝撃ニュースが流れた。現地映像の中継に切り替えられた直後、今度は2機目となるユナイテッド航空の旅客機が同ビルに突き当たるのがライブ映像で流された。パニック映画さながらのシーンに報知の社内は凍りついた。その後、3機目が米国防省のペンタゴンに激突、4機目はペンシルベニア州に墜落した。
報知は全社を挙げて一気にこのニュースにかかりきり、野球担当の運動一部も日本人選手取材に現地に飛んでいる記者をたたき起こし、また本紙にMLBのコラムを書いていた出村義和さんがニューヨーク在住だったことを思い出して連絡をとって状況を確認した。後で聞いた話では、出村さんは事件現場に近いところに住んでいたことで、許可が出るまで立ち退いて郊外で一時暮らす事を余儀なくされた。私は米大リーグへの影響として、今後の状況次第では「シーズン打ち切りも」という解説記事を書いた。
翌日も号外の可能性ありとして会社に宿泊。8時前に起きて外電やインターネットをチェックして、球界だけでなくスポーツ界で亡くなった方々を調べる作業が続いた。米大リーグのセリグ・コミッショナーから16日まで公式戦の中断を決める。17日から再開する旨が発表され、マリナーズの地区優勝やイチローの新人最多安打記録挑戦もご破算になるのではという最悪のシナリオは免れた。ニューヨークでは地元の警察と消防局の働きを称えて、ヤンキースやメッツが「NYPD」(ニューヨーク市警)「FDNY」(ニューヨーク消防局)のキャップをかぶってプレーしていたのが印象深かった。
マリナーズが地区優勝した際にはシャンパンファイトが自粛されたが、新人最多安打更新を目指していたイチローは再開後も安打を量産し続けた。しかし、マリナーズはリーグ優勝決定シリーズでヤンキースに敗れメジャー報道も一段落と思ったが、ヤンキースvsダイヤモンドバックスの激闘のワールドシリーズが待っていた。第7戦で九回に前日勝利投手になったランディ・ジョンソンがリリーフし、ダイヤモンドバックスがヤンキースの守護神リベラを攻略して逆転サヨナラ勝ち。巨人がリーグ連覇を逃したこともあったが、連日のようにワールドシリーズで紙面を割いた。2025年の同シリーズでドジャースの山本由伸が前日勝利投手から第7戦でジョンソンと同じようにリリーフで勝利投手になるとは思いもよらなかった。(次回は5月1日掲載予定)
