第52回 ビル・リー(島田 健=日本経済)

◎野球はいつまでも
▽スペースマン
米大リーグでは主にボストン・レッドソックスでプレーしたビル・リーは1969(昭和44)年から82年で通算119勝をあげた左腕。成績はともかく歯に衣を着せない、奔放な言動でより有名になった。マリファナの使用を擁護したり、中国の人口抑制政策に賛成したり、新聞ネタに格好の話題を提供した。
当時の同僚、ジョン・ケネディ内野手がつけたあだ名がスペースマンである。飛んでいたのだ。彼がよく引用したのがシンガーソングライターのウォーレン・ジヴォンの唄。リーの生き方にも共鳴したジヴォンは80年にこの唄を作って感謝を表明した。
▽野球は真面目
「君は自分の尻に座って 訳のわからないサインに頷く 男よ難しい仕事だぜ」「君がやらなければ、彼らが君を痛めつける 君がやっても彼らは君を痛めつける」「たった一人でダイアモンドの真ん中に立っている時 何があってもオレはいつも勝つためにプレーする」「ただ、時々オレは言わない方がいいことを言ってしまうんだ」
というリフレインは一言多いことを表しているが、他の歌詞は意外と真面目。そう、リーはグラウンドでは真摯なプレーをすることでナインに認められていたのだ。
▽政治が好き
放埒な発言は後年、政界に呼ばれるとすぐ反応してしまう結果になる。88年にはなんと大統領選挙の候補者に名を連ね(もちろん泡沫候補)、16年にはバーモント州知事選挙に挑んだ。8912票に終わったが、政治好き、お祭り好きのようだ。
▽プロ最年長勝利
野球に挑戦し続けるリーは12年に、独立リーグのサンラファエルでマウイ戦に先発、なんと8安打4失点で完投勝利をマークした。この時65歳、同リーグのブロックトンに在籍した時にマークした最年長プロ野球勝利の記録を2年ぶりに更新した。直球は70マイル(約115㌔)と遅いものの、無四球で94球という制球の良さだった。1265人の観客からは何度もカーテンコールを浴びたそうだ。
ジヴォンは03年に亡くなっているが、彼がリーの特徴とした野球に対する情熱は少しも衰えていないようだ。
検索は「Warren Zevon Bill Lee」(了)