「いつか来た記者道」(90)-(露久保 孝一=産経)
◎虎党も巨党もヤ党も「党派を超えて」
虎党の首相が党派をこえて巨党の国民的英雄に、心を込めた追悼のメッセージを送った。2025年11月21日、巨人は長嶋茂雄さんのお別れの会を東京ドームで開催した。グラウンドに設けられた祭壇は、明朗快活なミスターらしく同心円状に広がる形状で太陽をイメージして3万3333本の花で彩られた。野球関係者2800人が参列し、2階スタンド席に6800人のファンが見守った。王貞治さん、松井秀喜さん、北大路欣也さんがお別れの言葉を述べた。
このあと、高市早苗首相が追悼のビデオメッセージを寄せた。熱心な阪神ファンとして知られる首相だけに、スタンドからは首相が話し始めると「タイガースファンとしてどう話すのだろう?」との声が出た。しかし、「プロ野球を国民的娯楽に押し上げた最大の功労者」と長嶋さんを称え、結局、阪神ファンという言葉は発しなかった。代わりに、長嶋さんはすべてのファンを魅了したと次のように話した。
「政治の世界では、党派を超えて、という言葉がよく使われます。プロ野球の世界にもG党、虎党など、さまざまな呼び方がありますが、長嶋茂雄さんの誰にも愛されるお人柄はまさに、党派を超えて多くの方々を魅了しました。平成25年には、政府から長嶋さんに国民栄誉賞をおくりました。その際、当時の安倍総理は戦後最大のスーパースターとたたえています。長嶋さんが残された多大なご功績は永久に不滅です」
▽野球を愛した高市早苗、安倍晋三
高市首相は、以前からタイガースファンであることを公言している。2025年、大リーグでドジャースがワールドシリーズ優勝すると、大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希選手を祝うコメントをSNSで投稿した。そこには、「私が愛する阪神タイガースは日本シリーズ優勝を逃しましたが…」とちゃっかり、日本で敗退した「虎愛」をにじませた。高市首相のスマートファンカバーはタイガースのデザインであることも話題になっている。
高市首相が長嶋追悼ビデオで述べた安倍晋三さんは、少年時代からスワローズファンだった。小学生のとき、父親(安倍晋太郎元外相)に巨人対サンケイ(現ヤクルト)の試合に連れて行かれた。「サンケイアトムズは弱かったが、たまたま勝った。『鉄腕アトム』でなじみがあるアトムズが好きになり、それ以来ファンになった」
野球ではないが、陸上競技で活躍した玉木雄一郎・国民民主党代表は政界屈指のSNSの使い手として知られる。東大陸上部で100、400メートルの短距離を主に取り組んだ。記録が伸びなかったり、失敗したりしたときに、先生から「顔をあげて対処方法を考えよう」と言われた言葉が心に残り、現在でも実践しているという。落ち込んだときには、下を向かずに顔を上げて解決策を見つけ出そうというのである。
硬派の政界から、野球、スポーツを愛する柔らかい話を聞くのはまた楽しいこと。スポーツはやはり国民に愛される価値のある娯楽なのです。(続)
