「たそがれ野球ノート」(28)-(小林 秀一=共同通信)

◎ネトフリは黒船?
Netflixが来春のWBC全47試合の独占放送・配信権を獲得した。
地上波テレビでは見られなくなるということだが、スポーツデータ配信に精通している友人のMさんが解説する。
「国内で盤石な体制をつくっていた放送局や新聞社が全く知らないところで進められた取引によって、一瞬にして蚊帳の外に置かれてしまった」
彼によると、前回まで地上波放送していたTBS関係者は「来年も放送できるものと思っていた」とこぼしているから、予想もしていない出来事だったのだろう。
また長年にわたってWBCI(WBCの組織委員会)と連携して、国内の興行・運営を担ってきた読売新聞社も、「WBCIが当社を通さずに直接Netflixに対し、日本国内の放送・配信権を付与した」と声明を発表した。
背景にあるのは放送権料の高騰だ。前回大会までは約30億円だったものが、今回150億円にまで跳ね上がったという。
2年前のWBC決勝(日本―米国)の視聴率が40%を超えたとはいえ、国内テレビ局が短期的収入で賄いきれるものではない。
しかし、会員数が全世界で3億人を超え、2024年の売上高が5兆7000億円というネトフリなら可能で、日本を含むアジアでの拡大戦略があるのだから、当然の判断だったのだろう。
Mさんの指摘は手厳しい。
「これまでと同じ関係性でいけるという、日本的な、なあなあ感覚では通用しないということが分かったはず。地上波というメディアがスポーツ文化を支えてきた時代は終わった」
「グローバル資本という黒船は、圧倒的な資金力を武器に、旧来の秩序をいとも簡単に破壊し、新たなルールを提示した」
英国には国民的スポーツイベントの無料放送を国が保護する「ユニバーサルアクセス権」というものがあるようだが、日本ではもう手遅れ、後戻りはできまい。
野球もサッカーも次々に動画配信サービスにシフトし、視聴には対価が必要な流れだ。われわれはいい時代に生きていたなあ、とたそがれ記者は贖(あがな)うことなくつぶやくことにした。(了)