「いつか来た記者道」(93)-(露久保 孝一=産経)
◎「90歳ばんざい」池井さんに祝福の嵐
2026年は昭和満100年を迎え、各地で祝賀行事がおこなわれる。4月29日には、政府主催の「昭和100年記念式典」が東京・千代田区の日本武道館で開かれる。各都市でイベントや芸術、祭りなど最大な催し物が予定されている。そんな雰囲気のなか、100歳にはまで10年もある慶應義塾大名誉教授で野球通の池井優さんが、『90歳ばんざい』と題して本を出版した。本を贈呈するあいさつ文で、次のようにしたためた。
「90歳=卒寿を迎えました。なにか記念になることはと考え、友人、知人、教え子の皆さんに小生との思い出を書いていただくことにしました。いわば『生前葬』のアイディアです」
この言葉通り、88人にのぼる関係者が池井さんとの交流を書いている。池井さんが指導した慶大法学部のゼミOB・OGや学界、政界、外交界の仲間、慶大のクラスメート、野球を通じた友人、知人、落語、カラオケ・フレンドなどさまざま分野の人たちが、熱い思い出話を執筆した。温和な人柄で、会話の好きな池井さんの人間性が見事に表れた本である。
池井さんは子供のころから野球が大好きで、海外留学中に大リーグを観戦し情報を集めて『大リーグへの招待』を刊行した。くじ引きによる日本ドラフト制度を改善するためにFA制度等検討委員会の委員になり努力した。野球応援歌を作曲した古関裕而の「野球殿堂入り」を提供し実現にこぎつけた。長嶋茂雄さんと王貞治さんとは記念写真を撮り、本のグラビアを飾っている。
▽小山正明、中西太ら名選手が90歳で
90歳でも健康を維持している池井さんだが、プロ野球界では最近、3人の名選手が90歳で亡くなっている。小山正明、中西太、松永怜一の3氏である。小山さんは「針の穴を通す」と表現されたコントルール抜群の投手だった。阪神、ロッテなどで活躍し、通算320勝利、3159奪三振(ともに歴代3位)を記録している。中西さんは、西鉄ライオンズの黄金時代のホームラン打者で、平和台球場で「ショートライナーが場外ホームランになった」という伝説を残した「怪童」である。松永さんは、「オリンピックの優勝監督」として知られている。1984年ロサンゼルス五輪の公開競技だった野球で日本代表監督を務め、金メダルに輝いた。法政大監督時代には、三羽烏と呼ばれた田淵幸一、山本浩二、富田勝や通算48勝の山中正竹を育て、リーグ戦で6度優勝して大学野球の発展に貢献した。昭和90歳にあたる1936年生まれの選手には古葉竹識、広瀬叔功(よしのり)、中利夫、葛城隆雄さんら名選手が数多くいたが、皆さん鬼籍に入っている。
池井さんは慶大OBを主とした「ベースボールサロン」の主宰者として、長年の野球に関する経験と情報収集を生かし、東京六大学を中心とした野球談議の座長をつとめている。私を含め会員はエピソード満載の池井さんの講話に、うきうきとして聞きほれている。(続)
