「マイクの前の野球人」(小林 達彦=ニッポン放送)
◎大恩人! ツルさんこと鶴岡監督
今から55、6年前、入社1年目。福岡の平和台球場での西鉄―南海戦。試合前に南海ホークス鶴岡一人監督にインタビューした。
グレーのユニフォームに大きな体、陽に焼けた顔は厳つくチョッピリ怖かった。恐る恐る近づいて挨拶の後、中身は忘れたが、何か聞いた。監督は私の顔を見て、
「なあ!お前、もうチョット勉強して来い・・!」
今でもハッキリ憶えているが、意外にやさしい目をして言った。
その晩のナイターをしっかり見て、翌日また鶴岡監督に話しかけた。昨日の今日、監督は私を憶えていてくれたようで、
「おぅ!お前かぁ、話は何だ?」
と言われすぐ質問した。
「おぉ、ちったぁ勉強してきたナ!」
と言われ、ホッとしたのと、その言葉が滅茶苦茶嬉しかったのを今でも鮮明に覚えている。
それから南海戦には必ず会いに行った。
その度に「きょうは何、聞きてぇんだ?」と言われるので毎回、質問を考えていかなければいけなくなった。聞けば何でも答えてくれたが、 最初の言葉は決まって「バカ!そんなのも知らねぇのか?」がついた。
「監督!グランドにゼニが落ちてる、って言われるが、どういう意味ですか?」
と聞けば、
「バカ!そんなのも知らねぇのか。プロはグランドの上が全てなんだ…!」
また、聞き方についても、
「何でお前はケツに教えてください、聞かせてくださいと言うんだ?そう聞かれたらオレは“やだよ”と言うぞ」
と言われた。いいことを教えてもらったんで会社に戻って上司にこの話をしたら、
「小林!それは新人研修の時に教えてるゾ!」
と一言。小生アングリ…。(了)