オープナー、勝利投手のルールを変えるか(菅谷 齊=共同通信)

◎オープナー、勝利投手のルールを変えるか

近ごろ流行りのオープナー。いつもはリリーフ専門の投手が先発し、最初の1、2回を抑え、その後に先発ローテーションの投手が登板する、という投手起用である。昨年あたりから大リーグで盛んに使われ、日本では今年から採用されている。
 この戦い方は、先発投手の勝利は5イニングを投げること、というルールに一石を投じたとみる。先発ローテンションの投手は、これによってリリーフの勝利投手ルールが適用されることになり、5イニングの縛りから解放される。
 このやり方は、これまでもあった。節目の勝利数を達せさせるために、リードした終盤に救援で登板させた。タイトルがかかっている場合に行う手なのだが、それはペナントレースの最終盤に見られる。
 今のオープナーは開幕ののっけからやっている。
 野球は“ルールの変遷”の歴史でもある。先発投手の勝利は5イニングを必要とする、と決定されたのは大リーグの資料によれば1950年(昭和25年)のことだった。試合成立は5回とすることが関係しているのだろう。
勝利投手の決定は、戦前は公式記録員の判断だった。それを裏付ける措置があった。
 日本のプロ野球最初の300勝投手、ビクトル・スタルヒンが巨人時代の39年(昭和14年)に42勝を挙げた。戦後になって、先発5イニングのルールをあてはめたとき、2試合が該当しないことが分かり、39勝に訂正した。
 ところが61年に西鉄の稲尾和久が42勝をマークすると、スタルヒンの記録が再訂正されて元の42勝に復活した。そのときの規則を尊重する、という当たり前の理由からである。
 個人記録が話題になる現在、投手にとって勝利はより重要である。先発ロ-テーションがリリーフに出て行って短いイングで勝てるとなれば、これほどありがたい話はない。チームとしても主力投手の働き方改革を適用するばかりでなく、記録にも特典を与えることになる。
 コマ切れ継投が当たり前になった今、もう70年も前の先発投手の5イニング規則を検討するときだろう。公式記録員の出番かもしれない。(菅谷 齊=共同通信)