「大リーグ ヨコから目線」(19)-(荻野通久=日刊ゲンダイ)

◎折れたバット、売ります

▽中古品売るチームストア

先日、NHKの大リーグ中継を見ていたら、前田健太(ドジャース)が試合で投げたボールがケースに入れて販売されている場面が映った。それでアスレチックスのオークランド・アメラダ・カウンティ・スタジアムを訪れたときの光景を思い出した。
 大リーグの球場にはそれぞれ各種グッズを売るチームストアがある。ユニホームのレプリカ、キャップ、Tシャツ、タオルなど様々な商品が販売されている。それとは別に球場の通路にもグッズを並べた売店がある。席を探して歩いていると、通路の一角に「USED GOODS」と看板がかかっている。
 「中古品?一体、何のこと?」と思ってのぞいてみると、バットが何十本と箱の中に入っていて、何十着というユニホームがハンガーにつるされている。他にもケースに入れられたボールがやはり相当数ガラスの棚に並べられている。

▽値段は人気、活躍に比例

試しに箱の中のバットを1本手に取ってみると、真ん中にヒビが入っている。さらによく見ると、バットに選手の名前が刻印されている。要するに試合で選手が使い、折れかけたり、ヒビが入ったために使えなくなったバットだった。そしてそれぞれに値段がついている。R・ラウレーノ外野手(375ドル)、M・オルソン一塁手(325ドル)…。同チームの主力選手だ。選手の活躍、人気度やバットの破損の状態で価格が決まっているようだ。
 ユニホームもチェックしてみた。こちらは背番号と背中の名前で誰のかがわかる。しかも、2018年3月などと年月日が明記してある。オープン戦やキャンプで着用したもののようだ。F・バレード(275ドル)、M・セミエン(275ドル)など、こちらもバットを同様の価格設定とみた。
 さらに帽子もM・オルセン(125ドル)、D・メイグデン(60ドル)とあり、最低がC・ワンなどの50ドルだった。ヘルメットもあり、こちらは60ドルだった。
 ボールは公式戦で使用されたものが販売されていた。例えば5月1日のアスレチックス対レッドソックス戦のボールが80ドル、同カードのビジターでのボールが50ドル。試合途中でベンチの戻されたボールを球団が「販売用」にキープしておくのだろうか。
 変ったところでは公式戦で使われたベースが225ドルだった。詳細は分からなかったが、価格から判断すると何か特別な試合でのものかも知れない。

▽手書きのメンバー表

また両軍の先発メンバーがかかれた用紙というか表も売られていた。日時が記入され、両チームの先発メンバー表がケースに入れてられている。メジャーリーグの試合のテレビ中継でベンチが映ると、たまにこの紙を見られることがある。
 こちらは140ドルから200ドル。手書きで1枚しかないからか、思ったよりも高かった。ファンとしては、実際に選手のぬくもりのあるグッズが手に入り、球団として多少なりとも収入になる。廃棄されるべきものの有効活用にもなろう。
 筆者が巨人を担当していたとき、毎年、春の宮崎キャンプを取材した。2月初旬の宮崎の球場は高千穂降ろしといって冷たい風が吹き、寒い日が少なくなかった。報道陣はベンチ前で石油缶に薪を入れ、たき火をして暖を取ることもあった。そんなとき、フリーバッティングで折れたり、ヒビの入ったバットをフロントの人が薪代りに石油缶に入れてくれた。
 アスレチックスの関係者がみたら、なんともったいない、と思ったかもしれない。(了)