第27回「あとひとつ」-(島田健=日本経済)

◎感動の登場曲
▽2013年日本シリーズ
 この唄といえば田中将大(楽天ーヤンキース)である。2013(平成25)年の日本シリーズ第7戦、楽天が3点リードの九回表。マウンドに指名されたのは前日、160球投げて負け投手になった同投手だった。
「あと一粒の涙で ひと言の勇気で 願いがかなう その時が来るって」
この登場曲が始まると、ファンの声が大きく重なった。まさに球場が一体となっていた。田中は巨人を無失点に抑え球団初の日本シリーズ胴上げ投手となった。
筆者は当時、楽天担当でなかったため、第3記者席でのテレビ観戦だったが、同僚記者によると、まさに感動的だったそうだ。田中は無敗のシーズン24連勝と球団初優勝を土産に米大リーグへ旅立つことになった。
▽甲子園応援曲
FUNKY MONKEY BABYS(ファンキー・モンキー•ベイビーズ)が10年の夏に
リリースしたこの曲は最初から田中と縁が深かった。夏の全国高校野球で、朝日放送の応援ソングとして採用されたものだが、ジャケットやミュージックビデオに楽天のユニホームを着た田中が起用されたからだ。
これが接点となり、10ー11年には登場曲、12年からは九回までマウンドに上がりかつリードした場面の限定版となっていた。日本シリーズではまさかのセーブ場面でのファンを含めた大合唱になった。
▽米大リーグでも
 田中といえば、ももいろクローバーZ(以下ももクロ)の大ファンで大リーグでも登場曲は毎年度、ももクロの唄を使っているが、実はヤンキースでも九回に登板、かつリードしている場合という楽天時代と同じ条件でこの唄を用意していたのだ。
ただ、先発、中継ぎ、抑えとほぼ分業制になっている大リーグではなかなか完投さえ難しい。ヤンキースには抑えに最速のチャップマンもいる。5年目までに完投勝ちは5度あるが、いずれも敵地だった。
6年目の19年6月、レイズ戦でチャンスがやってきた。八回で100球、かつ3点差でセーブがつく場面でもブーン監督が続投を命じたのだ。田中は6年振りにマウンドで聞くことになった。もちろん本拠地初完封勝利を達成した。
検索は「あとひとつ ファンキー・モンキー・ベイビーズ」(了)