第69回「完全試合」(島田 健=日本経済)

◎アイドルだって野球
▽百万ドルの微笑
1977(昭和52)年の日本テレビ、スター誕生を機に翌年デビューした石野真子(61年生まれ)。当時はニューミュージック系やテクノポップに押されて、80年に松田聖子が出てくるまではアイドルの冬の時代と言われていた。石野は唄もうまく、タレ目と八重歯を武器にして「百万ドルの微笑」というキャッチフレーズで大いに頑張ったが、大ヒットは出せなかった。そんなアイドルをなんとかしてやろうという、周りの気合いがわかるのがこの唄ではないか。
▽阿久悠が仕掛けた?
当時は王貞治さんの本塁打記録更新もあって今では計り知れないほどの野球ブーム。78年に2枚目のアルバムを作ったとき、後にピンク・レディーの「サウスポー」を作詞する阿久悠が、野球人気に便乗するために紛れ込ませてとも言われている。あまりにも完全な野球用語で硬いイメージもあって佳曲に止まったが、唄のうまさは分かる。79年に「プリティー・プリティー」を出した時、石野は女子野球チーム「プリティーズ」まで作った。名古屋球場で板東英二氏のチームと対戦したのを見たという証言もある。
▽180センチ68キロ
サビは「すべてが弾ける すべてが弾ける あなたの完全試合」で結構まとまっている。注目すべきは最初の「180センチ 68キロ スニーカー走らす 都会のジャガー」。まるで少女漫画に出てくるようなスマートな投手であるが、何と30年後に出現するのだから面白い。2008年の日本シリーズで2勝を挙げMVPに輝いた西武の岸孝之である。23年現在、楽天所属で体重は77キロに増えているが、当時は68キロでプロとしてはがりがりだった。
▽重要な脇役
石野は2度の離婚、愛人騒動などを経て、今ではなかなかの女優ぶりを発揮している。22年には主演舞台を務め、テレビドラマでは人気の「相棒」に2度出演しているし、23年には、「リハーサルオーケストラ」、「警視庁アウトサイダー」などに顔を見せている。85年には特長だった八重歯を削って、今は優しそうなお母さん役が多いようだ。自分が若い時のアイドルが現役で頑張っているのを見ると力をもらえる気がする。
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