「しゃべって、出会って」(2)-(近藤 雄介=フジテレビ)
◎評判の「ガハハハ~」で締めるために
試合の中継やスポーツ報道番組「プロ野球ニュース」でキャスターを務め、多くの往年の名プレーヤーと仕事をさせてもらいました。すでに亡くなった方も多い。
通算310勝の別所毅彦さんとは、なんども「プロ野球ニュース」でコンビを組みました。2人で試合の結果を伝え、最後は別所さんがしゃべり終わって豪快に笑いながらCMに入るのが決まりでした。別所さんの白い歯が見えたら、ハイ、CM突入!となったのです。
「最後のあの笑いが好きですって、ファンに言われるんだ」
別所さんは視聴者からの反応に高笑いです。私は、試合結果などを一緒に伝える時は最後の〝ガッハハ〜〟の時間が残るように考えて進めました。
御大は食欲も豪快でした。札幌遠征ではジンギスカンをガッツリ。関西ではフグ刺しを箸でグルッとすくって一気にモグモグッ!でした。
その別所さんが青くなったことがあります。横浜スタジアムの試合が長引いて、放送に間に合うか際どい。おまけに首都高の大渋滞にはまった。別所さんとアナウンサー(私の先輩)は車を降り、高速の出口まで必死に走り、タクシーを拾ってなんとか東京のスタジオに駆けつけてセーフでした。
なんという「珍プレー」でしょう。大きな身体の別所さんが真夏の高速道路を突っ走ったのです。もし今こんな行動をすれば、その姿がドライブレコーダーやスマホの動画ネットにあがり、〝あの別所が高速をダッシュ!ガハハ〜は出せず!〟となったはず。でも、放送はちゃんと行い、きっちりとガハハッ〜で締めくくりました。
解説も、笑いも、食欲も豪快だった元名投手です。その反面、繊細なところもあった。手元にいつも幅10センチ弱の細長い紙を持っていました。選手の記録・成績などを手書きで書き足して、紙が足りなくなるとていねいに貼り足していた。大きな身体の背中を丸めるようにして小さな字を書き込んでいました。
別所さん、ごめんなさい! たま〜に失敗はありましたね。いつものようにガハハ〜と笑ったけどCMまでの時間が長すぎて笑いが持たず、真顔にもどってしまったことが…。(続)