「記録の交差点」(11)-(山田 收=報知)

第11回 中村剛也(西武)⑥
 現役最高のホームラン打者・中村を巡る話題を取り上げてから5か月になる。オフにスタートして、今は2024年シーズン突入後1か月が経った。所属する西武ライオンズに歩調を合わせるようにやや低調の出だし。とはいえ、4月10日、球団新の21年連続本塁打となる今季1号、同24日には2号(通算473本)を放った。史上9人目となる通算500本塁打達成を期待する。付け加えるなら、25日には、40代で史上初となる5試合連続二塁打なんていう記録も打ち立てたが、本人は「二塁打より本塁打の方がいい」とのこと。納得ですね。
 前回に続き、三振の話をしたい。通算三振のプロ野球保持者・中村は2024年もコンスタントに数字を積み重ねている。出場16試合で16個。故障なく3季ぶりの100試合以上出場すれば、おそらく13度目の100三振は確実だろう。ホームランを打つが、三振もという中村らしいバッティングが展開できれば、今年もファンを楽しませてくれるに違いない。
 さて、三振と言えば外国人。前回書いたが、日本プロ野球のシーズン三振記録の1~3位及び5位はラルフ・ブライアントが持っている。1989年10月12日、優勝がかかった西武とのダブルヘッダーにまたがる4打数連続本塁打や、90年6月6日、東京ドーム天井スピーカー直撃、推定160㍍の史上初認定弾など強烈な印象を残した選手だった。
 88年、ドジャースから中日に入団したものの外国人枠(当時2)阻まれ、近鉄へトレードされたことが、彼の人生を変えた。ホームランも凄いが、三振もまた超ド級だった。とくに93年に記録した204三振は、他の追随を許さない(!?)。127試合、497打数で達成しているから、1試合あたり1.61個。1三振にかかる打数(三振率)は2.44.三振ゼロは23試合しかなかった。しかし、中村同様、1試合最多記録の5は残していない。
 同時に感嘆するのは、204三振しながら、42本塁打、107打点をマーク。前回も述べた本塁打王+打点王+三振王の“3冠王”を獲得した6人のうちの1人。トータル8シーズン773試合で1186個、1シーズン100三振を6度記録している。超特大ホームランとあきれるほどの三振の山を日本人の目に焼き付けた男だ。
 ブライアントは31試合連続三振というパ・リーグ記録保持者だが、プロ野球記録ではない。セ・リーグ及び日本記録は、1979年の1シーズンのみ阪神に在籍したリロイ・スタントンの34試合。年間では136で、当時のセ最多記録だった。現在は村上宗隆(ヤクルト)の184(2019年)である。
 実はブライアントは、この31試合連続三振を90年6月29日~8月29日で記録している。8月29日終了の段階で、スタントンの記録まであと3に迫っていた。普通なら、まだまだ記録は伸びたはずである。だが、近鉄・仰木彬監督は、翌30日、ブラ砲をスタメンから外す。7回に代打で起用すると、ブライアントはなんと内野安打。早速代走を送り、連続試合三振はストップしたのだ。こんな“仰木マジック”がなかったら、スタントン超えは間違いなかった? =記録は24年4月26日現在=(続)