「たそがれ野球ノート」(15)-(小林 秀一=共同通信)

◎接戦を制すのは

今年のプロ野球個人打撃成績で目を引くのは、現時点(8月24日)で3割を超す打者がセ、パ一人ずつしかいないことだ。セ・リーグのサンタナ(ヤクルト)とパ・リーグの近藤健介(ソフトバンク)で、打率はこの時点でともに3割1分。

チーム打率を見ると、昨年より少し悪い程度で、必ずしも「投高打低」とまでは言えないものの、ここ数年の投手力の向上は目を見張るものがある。どの球団でも平気で150キロ以上のスピードボールを投げる投手を抱えている。とくに試合後半ともなれば、強い球を投げる投手が小刻みに出てくるのだから、打者劣勢はやむを得ないところか。

投手力が高い場合、接戦に強いチームが有利になることは容易に想像がつく。セ・リーグの優勝争いはまさにその通りの展開になっている。

首位を行く広島は伝統の機動力野球で好成績をあげている。小細工のきく打者をそろえ、どの打順から攻撃が始まっても仕掛けていける打線。派手さはないが、接戦の終盤にじわじわと攻めていくしぶとさが売り物だ。

巨人は昨年、シーズン本塁打は164本だったが、今年は現時点でリーグ3位の61本。昨年とは全く違う戦い方で優勝争いに臨んでいる。勝負どころでのベンチを見ていると、阿部監督が細かく指示を出して、バッテリーをきっちりと管理している様子がうかがえる。おそらく、勝負どころでの配給には細かくサインを送っているのではなかろうか。

両チームには守備力の安定や、細かい継投策といった共通点もある。残り試合が30試合前後になって、目の離せない日が続きそうだ。(了)