「記録の交差点」(28)-(山田 收=報知)

第28回 秋山翔吾②
 この原稿を書いている時点からちょうど10年前、2015年にプロ野球5年目の秋山翔吾(西武・27歳)が打ち立てたシーズン最多安打のNPB新記録。5年ぶりにマット・マートンの214安打を上回る216本をマークした。
 新記録達成の状況がドラマティックだ。シーズン最終盤、2試合を残して209安打を積み重ねていた。9月30日からのオリックス2連戦(京セラドーム)がその舞台だった。タイ記録まであと5本。そこでなんと二塁打、三塁打、四球、二塁打、安打、二塁打、四球。5打数5安打の乱れ打ちでイチローを超え、一気にマートンに並んだ。
 そして迎えた10月1日の最終戦。2打席凡退のあと、三塁内野安打、左中間三塁打と俊足のトップバッターらしいパフォーマンスでプロ野球記録を塗り替えた。5の5で新記録とは…。このシーズンでは唯一の5安打が最も必要とされる時に飛び出したのだ。ちなみにこの年、秋山は3安打以上の固め打ちを27度マーク(4安打3度、5安打1度)。2010年の西岡剛(ロッテ)に並ぶ年間最多猛打賞のプロ野球記録という副産物もあった。
 2試合7安打で記録達成は、書けば簡単だが、プレッシャーも相当なものと想像する。そこで、この年の打撃内容を調べてみた。大雑把にまとめると、とてもコンスタントな成績を残している。まずは休まない。すべての試合に「1番・センター」で143試合にフルイニング出場。加えるなら2019年まで5シーズン連続フルイニング出場している。休まず出場するから当然、打席数675はリーグトップだ。
 216安打の中身を見てみる。単打156(内野安打18)、二塁打36、三塁打10、本塁打14。特に長打力に優れているという訳ではないが、長打率. 522、出塁率.419、OPS.941とかなりの高レベルだ。
データを眺めて面白いと思ったのは、左打者ではあるが、対右腕投手の打率.353、対左腕投手の打率.379とサウスポーを苦手としていなかったこと。秋山の特長といえる外角球をセンターから左へ弾き返すバッティングが数字に表れている。
 また、ホーム(西武プリンスドーム)の打率(.343)よりビジター(.375)の方が上回っている。付け加えるとデーゲーム(50試合打率.380)の方がナイトゲーム(93試合.348)より得意としていたようだ。俗に昼間の試合の方がボールは遅く見えるというが、コンディショニングの整え方が巧みだったのではないだろうか。
 粘り強い打撃が特徴だと思う。この年、143試合中、無安打だったのは24試合しかない。連続ノーヒットも2試合が最長でしかも3度のみ。粘り強さを感じるのは試合終盤の姿だろう。1~3打席までノーヒットだった試合が48あるが、4あるいは5打席目にヒットを記録したのが半分の24度もある。打席別の打率、出塁率を調べてみると【第1打席】打率.321出塁率.378【第2打席】打.331出.366【第3打席】打.323出.393【第4打席】打.426出.496【第5打席以降】打.413出.481となる。4打席目以降の数字は、驚異的でさえある。あっさりと無安打で終わらない勝負強さこそ快記録を生み出す原動力だったのだろう。=記録は2025年9月26日現在=(続)