「リ苦エスト」―(島田健=日本経済)

▽チャレンジ制とは大違い

今季から、日本プロ野球(NPB)では、ビデオ検証によるプレーの再確認、リクエスト制を始めたが、5年は早いと思っていた。
 本家、米大リーグ(MLB)のチャレンジ制に対して、著しくインフラ整備が遅れているからだ。独自で整備されカメラも自前のテレビ局を持ち、全球場で走者のスピードなどの動作解析も行うMLB。
 日本の場合は、自前のテレビシステムはないから、映像は各中継局のものを提供してもらうしかなく、一部の球場以外は質が本家とは段違いである。

▽誤審や不可解判定続く

案の定、6月22日のオリックス-ソフトバンク戦では延長10回の大事な場面で、ファウルと審判に判定された打球が、リクエストによってホームランとなり、試合を決定する一打となったが、試合後の福良監督訴えで再検証が行われた結果、審判がファウルと認める大失態。
 10月21日の、クライマックス最終ステージでは、アウトになった西武・秋山の盗塁を巡って10分も中断したあげく、「セーフに覆すだけの映像が得られなかったので、最初の判定通り」と責任審判員。場内に示された映像ではセーフに見えただけに、西武ファンから大ブーイングが起きた。

▽審判は二重苦

審判員は、ビデオ検証によっていっそう正確性を問われることになったが、あやふやなビデオをもとに、同じ審判団がもう一度判定を下さなくてはならないという、二重の責任を背負うことにもなっている。
 MLBでは、チャレンジされたら、ニューヨークの映像本部で検証し、判定する。結果は電話で連絡されるから「神の声」的に審判が下るわけだ。
 リクエスト制を続けるなら、誰でも納得出来るような精密な映像を全球場で見られることが、まずは必要だろう。(了)