「KKドラフトの舞台裏」(5)完-(山田 收=報知)
◎巨人と西武でKK分け合う
▽西武が仕掛けた「巨人両取りプラン」騒動
だからこそ、桑田は密かに巨人による指名を願っていたのだろう。
前述した通り、桑田は退部届を出しておらず、プロ球団とは接触していない。例外が巨人だった。
他球団は父親の泰次さんを通して、意思疎通を図ろうとしていたが、本心には届かなかった。
そこへ例の西武・根本管理部長による「巨人KK両獲りプラン」暴露が飛び出した。
他の球団スカウトは、疑心暗鬼になりながらも「桑田プロ入り」の可能性を見極めようとしたのである。
11月20日ドラフト当日の朝、泰次さんのもとに複数球団から、
「ドラフトで指名する」
との電話が入ったという。
▽桑田の本音、巨人なら2位指名でも入団
桑田が現役引退後、あるテレビ番組で、
「3球団からドラフト1位で指名するという話があった」
と発言、3球団がどこかは明言しなかった。巨人はそこには含まれなかったという。
プロのスカウトは可能性が少しでもあれば、ギリギリのタイミングまで、相手に打診を続けるもの。
でも結局は、桑田プロ入りに確証を持つ球団は巨人以外になかった。「密約説」は桑田の本心を見抜けなかった他球団、メディアらの言い訳ではないかというのが、私の見方である。勿論、私も見抜けなかった1人であるのだが…。
桑田は後に、
「ドラフト1位にこだわりはなかった。巨人なら2位でも行った。巨人でやりたかっただけ」
と話している。
巨人のKK両獲りは理にかなった作戦ではあった。それをひっくり返したのが、西武の仕掛けによる情報戦だった。
最終的にはその両球団でKKを分け合って決着した。(了)