「いつか来た記者道」(54)-(露久保孝一=産経)

◎球場できつねとたぬきの化かし合い?
 2022年のパ・リーグは、オリックスと日本ハムが熱いトップ争いを繰り広げた―。オリックスは優勝したが日ハムは最下位だ、そんな冗談はやめてくれと言われそうだが、これは野球ではなくチアリーダーのダンス合戦の話である。両チーム所属のチアガールがグラウンドで踊るダンスが話題になり、どちらが素敵かという「人気トップ争い」になっているというのだ。
 新庄剛志監督のもと最下位を独走した日ハムにあって、公式のチアリーダー「ファイターズガール」の「きつねダンス」が人気を集めた。札幌ドームで、きつね耳をつけたチアリーダーがアップテンポな音楽に合わせてきつねのまねをしてダンスを演じる。このダンスは初心者でも踊りやすい軽快な振り付けとあって、交流サイト(SNS)などを通じて話題になった。日ハムファンからは「野球でだめなら、せめてダンスで一番の人気をとろう」との声が飛んでいるという。
 「きつねダンス」は「現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語にもノミネートされるほど人気が定着した。
▽ハマは野球もダンスも旋風めざす
 これに対抗する形でオリックスのチアリーダーが、「たぬきダンス」を登場させた。7月、京セラドーム大坂での試合中に公式ダンス&ヴォーカルユニット「BsGirls」(ビーズガールズ)がそのたぬきダンスを初披露した。チアリーダーたちは黄色の耳としっぽをつけてグランドに散り、腰を動かしながら尻尾をフリフリと揺らして観客を魅了した。スタンドから「かわいい」「きつねに対抗してたぬきを出したとは見事だ!」との言葉が出た。オリックスは終盤に追い上げ、パを制覇した。たぬきは優勝トロフィーに化けた?
 セ・リーグでは、DeNAの公式パフォーマンスチームの「Diana」(ディアーナ)が注目されている。11月に23年のメンバーを選ぶオーデションが開かれ、オールジャンルのダンスができることを条件に厳しい審査が開かれた。審査に合格する20人前後の女性たちによって、力強いヒップホップの動きやジャンプ、ターンといったバレエの踊りなどを加えたダイナミックな演技が横浜スタジアムで披露される。ギリシャ神話の女神を意味するDianaのように、ときには妖艶、ときには笑顔を交えた華麗なチアダンスは、23年のDeNAにとって、セ・リーグ優勝を目指す戦いとともに応援の声が高まりそうだ。
▽女神たちのダンスに乗って好投、好打を
プロ野球の公式チアリーダーは全12球団に存在する。ヤクルトは「パッション」、阪神は「タイガースガールズ」、巨人は「ヴィーナス」、ソフトバンク「ハニーズ」、西武「ブルーレジェンズ」などという名がついている。
 「きつねダンス」と「たぬきダンス」を追って、どのチアリーダー軍団が新しい旋風を巻き起こすか。球場を彩る女神たちの戦いぶりにもファンの目が注がれそう。選手たちには、女神からの応援の魔力が乗り移って好投、好打に結びつくことを願っている。(続)