「いつか来た記者道」(59)-(露久保孝一=産経)

◎100年後のプロ野球天国を夢見て
 前回の記事は「生誕100年、司馬遼太郎×真田重蔵」と題して書いた。今回は、時代を回転させ「100年後のプロ野球」を夢見て執筆したい。100年先のことだって? 「来年のことをいえば鬼が笑う」とはいうが、この100年先の話はけっして奇想天外な計画ではない。発信元は横浜DeNAベイスターズである。
 DeNAは、2023年に球団誕生から12シーズン目を迎えた。前年はセ・リーグ2位に躍進し「DeNA強し」の印象を残した。23年のペナントレースでは、投打とも戦力が整い「実りの秋」に向けて熱き戦いを繰り広げている。
 このDeNAは、新しい事業計画として「100年後の未来につなぐスポーツ」構想を掲げた。その骨子は、DeNAのスポーツ事業は複数のプロスポーツ運営を通じての強みや地域との結びつき、未来へのビジョンを示すためDeNAスポーツグループとして装いを改め、新たなメッセージの発信を開始した―というものである。
▽5年後にDeNAを常勝軍団に
 球団の常務取締役チーム統括本部長の萩原龍大さんは、次のような理想を語る。
 「100年後に野球をつなぐことを」をゴールとし、20年後を目処に「世界一強く魅力的な球団になること」、そのために5年後には「日本国内で常勝軍団の入口に立つこと」をマイルストーンとおいています。(『三田評論』2023年4月号)
 ハマのファンには、なんと心強いアドバルーンであるか。球団の歴史を振り返れば、リーグ優勝はわずか2度しかない。最初の優勝は1960(昭和35)年である。それまで6年連続最下位だった大洋(当時)に乗り込んだ三原脩監督は、巨人との接戦に勝ち日本シリーズも制した。次の優勝は1998(平成10)年、権藤博監督が横浜ベイスターズを栄光のゴールに導いた。この年も日本一を達成している。これ以来、優勝から遠ざかっている。それなのに、「5年後に常勝軍団」へとは、大胆な宣言ではないか。他球団からは「それは大言壮語というものや」という声も出ているという。
 そんな空気を察してか、DeNA11年間で優勝経験のないことを念頭に萩原さんは「我々にとっては果てしない目標ではありますが」として、一歩ずつ着実に歩を進め、「強い」存在でありたいと考えています、と付け加えた。
 有言実行を証明するために、2023年の戦いにおいて三浦大輔監督のDeNAは、25年ぶりのセ・リーグ制覇を勝ち取らなければならないと燃えている。一歩ずつ着実に歩を進め、常勝軍団をつくり、100年後へ明るい野球をつないでいく光明を灯し続けるためにも…。DeNAを含めて、100年後のプロ野球界はどうなっているか、夢見るのも悪くはないと思う。(続)