「野球とともにスポーツの内と外」-(佐藤彰雄=スポーツニツポン)

◎B級戦士の反骨
女子プロゴルフツアーの話です。不動裕理が6年連続(2000~2005年)して賞金女王の座に輝き“絶対女王”の名を欲しいままにしていた時代。03年にプロ転向した宮里藍がいきなり不動に下剋上を突きつけました。04年、05年のシーズン、激しく競り合って賞金ランク2位。
刺激が刺激を呼びます。宮里に続け、と若手が台頭。負けじ、と実力派ぞろいの韓国勢。不動を軸に三つ巴の抗争軍団が出来上がり、こうした“戦いの構図”が試合を面白くさせました。
高いお金を払って試合会場に足を運ぶ観客は「2つの期待」を抱きます。1つは「必ずやってくれるだろう」と、これは頂点に立つ人への期待。こうした観客の期待に応えてやってのけてくれるのがスーパースターの資質です。
他方「“何か”をやってくれそうじゃないか」と、もう1つの期待。観(み)る側をドキドキ・ワクワクさせる人は、概して発展途上的な位置にいる人、つまり脇役の反骨です。こうした番狂わせを呼ぶ下剋上があってこそ、プロスポーツというのは魅力に満ちるのですね。
例えば大相撲-。
横綱・大鵬がスーパースター的な存在だったとき、明武谷、岩風、栃東、長谷川といった曲者ぞろいのB級スター勢が土俵をにぎわせていました。長身の人間起重機=明武谷、鉄筋の潜航艇=岩風、戦後最強の関脇=長谷川、稀代の技巧派=栃東…名前を思い出すだけでドキドキ・ワクワク感は高まります。
ではプロ野球は? 基本的な構図は、強者・巨人(スーパースターの長嶋)を軸に“打倒”をどう果たすか、アンチをどう納得させるか、という形でしょう。そこにどんな曲者が顔をそろえていたでしょうか。
無作為に思い出すのは-。
“元祖カミソリシュート”の投手・秋山登(大洋)。大洋のエースでありながら入団後、4年連続リーグ最多敗戦投手を記録。だから勝利に味がありました。“仏の徳さん”こと飯田徳治(南海-国鉄=野手)。一塁手としてショートバウンドの処理は神業級。代打で本塁打と言えば高井保弘(阪急)、さらに代打の神様・八木裕(阪神)…。
プロの世界は、まさに“役者やの~”の集まり。スーパースターに負けじと踏ん張るB級スターの反骨こそが命です。(了)