「しゃべって、出会って」(5)-(近藤 雄介=フジテレビ)
◎エースはみんなカナヅチ?
登板を終えたピッチャーは肩や肘を冷やします。大きな、氷のう? とは言わないですね。アイスバッグというそうですね。
氷が入った大きなバッグをテーピングでグルグルに巻きつけて試合後のインタビューを受ける投手の姿をよく見かけます。働いた筋肉の炎症を抑えるため、強烈に急激に冷やします。傷んだ毛細血管の早い回復のためにも必要だ、とあるチームのトレーナーから聞きました。冷やさなければいけない!のです、今は。
往年の大投手から聞いたことがあります。当時は冷やすなんてありえなかった。大切な肩や肘をいたわるためには、温めていたそうです。ふだんも、登板後も大切に温めるのが常識だったそうです。米ぬかなどを入れた布袋を温めて、それを肘、肩に当てていたとのこと。それが日々心掛けていた身体の手入れだったそうです。今とは真反対だったんですね。この大投手は通算310勝をマークしました。もし、温めないで冷やしていたら…?
200勝をマークした名投手がいます。彼の現役時代にも引退後もお世話になりました。流れるようなフォームでONを苦しめた、まさに翻弄したピッチャーです。〝カミソリ〟と言われた彼のシュートはもはや伝説です。
彼と話していて驚いたことがあります。全く泳げないそうです。運動能力抜群なのに、なぜ?
当時は、「投手は肩や肘はもちろん、身体を冷やしてはいけない」という考え方が当たり前で、名門校の投手がプールや海に入ることは許されなかったそうです。
水泳の授業は見学していたそうです。だから泳げない。驚きです。時代が違ったのですね。
もしかしたら、往年の名投手は「カナヅチ」ばかりかもしれません。(続)