「スポーツアナウンサーの喜怒哀楽」(13)-(佐塚 元章=NHK)

◎「日照」に欠陥あり!国立競技場

 2025年が明け、1月13日国立競技場で全国高校サッカーの決勝戦がおこなわれ、テレビ観戦したファンは多かったと思う。ほとんどの視聴者は、グランドの日影がテレビ画面を覆い気になって試合を楽しめなかったのではないだろうか。テレビ視聴だけではない。スタンドの観衆も影でボールが見づらく、グランドの選手も暗かったり、まぶしかったりでプレーしにくいと語っていた。

国立競技場は太陽が西に傾き始めるころ、強烈な日光が差し込む、さらに日差しが傾くとスタンドの巨大な影がグランドを覆い、フィールドの左右が明暗真っ二つ、テレビ画面ではハーフウエイやペナルティーエリアのラインも見間違うほどだ。午後3時から4時半頃が最もひどい。もちろん、日が暮れ照明塔が灯れば何ら問題はなくなる。           

 日差しとスポーツの関係で私の経験から思い出したのが、天気がいい日の旧広島市民球場である。1980年代は試合開始の午後6時になっても始まらない。西日が左翼スタンド上から強烈に差し込み、三塁ゴロ、ショートゴロの送球を一塁手が眩しくて見えないため開始を遅らせていたのだ。長い時は30分も遅れた。ある時、左翼スタンド上方に日差しを遮断する巨大な板が設置された。最初は固定式、後に可動式となって1件落着した。

 神宮球場では、現在も選手が太陽光と戦っている。午前中は一塁側スタンド上からの日差しのため、2024年11月の明治神宮野球大会決勝で、左翼ライナーを左翼手が見失い長打としてしまった。東京六大学野球では午後、三塁側スタンド上から強烈な日の光が差し、全野手がサングラスをつけるほどだ。神宮外苑再開発で、神宮球場はいずれ生まれ変わる。「太陽安打」という言葉が野球界に残っているが、まずはプレーヤーズファーストで太陽光を配慮した球場の位置、設計を考えてほしいものだ。

 話を戻して国立競技場だが、実は、私は東京五輪前の20年元日、こけら落としの天皇杯サッカー決勝のテレビ中継をみて、フィールド半分が巨大な影で覆われてボールが見えないことに愕然とした。テレビ画面は真っ暗! 以来、これは問題になるぞと思っていた。

著名な各分野の専門家の意見を聞いて最終的に、隈研吾さんの設計で、日本中の木材を使用した屋根など、斬新なアイデアを集めて完成したはずのオリンピックスタジアムである。日本の象徴である国立競技場が日照対策の配慮がなされていなかったのは 実に意外である。(了)

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