「大リーグ見聞録」(84)-(荻野 通久=日刊ゲンダイ)
◎「悪の帝国」ドジャース
▽①飽くなき戦力補強
「公式戦の順位は開幕前にはもう決まっている。プロが見れば分かる。ただ、ファンは納得しないから試合をやる」
今オフのドジャースの飽くなき補強を見て、根本陸夫の言葉を思い出した。根本は西武(1979年~92)、ダイエー(現ソフトバンク、1993年~99年)で全権監督、フロント幹部としてチーム作りに辣腕を揮い、常勝球団への基礎を作ったことで知られている。ドラフト、トレード、FA、外国人・・オフの間の戦力補強、監督を含めた人事でチームの成績が決まるという考えだ。時にはそのやり方が批判や論議を招いたこともあったが、根本のチーム作りへの自負が言わせたセリフではないだろうか。
ドジャースは今オフ、ジャイアンツからFAの先発B・スネル(5年契約、年俸約282億円)、やはりFAのパドレスの抑えD・スコット(4年、約111億円)を獲得。佐々木朗希(契約金約1億円、年俸約1億1600万円)の争奪戦にも勝利した。スネルは2度のサイ・ヤング賞獲得の左腕。スコットは「過去2シーズンで最も卓越したリリーバー」(18勝12敗、44S、35H)とMLBのHPで紹介され、2024年の被打率は・134だ。2人を取ることで、ナ・リーグ同一地区のライバルの戦力を削ぐことにも成功した。
佐々木に関しては言うまでもあるまい。「二刀流ではないから大谷にはなれないが、投手の才能では大谷に匹敵する」「将来有望選手100人の中のトップ」と米メディアも大絶賛だ。
さらに2019年に41でセーブ王(当時パドレス)のK・イエツーもレンジャースから移籍。2023年に11勝(4敗)のB・ミラーも怪我から復帰する。昨季13勝(7敗)を挙げたJ・フラハティの去就は未定(現地28日現在)で、大谷や中継ぎのM・コペックは故障で開幕には間に合わない。それでも他球団が羨むピッチングスタッフだ。
▽②狙いはWS連覇
野手では韓国キウムからFA移籍の内野手のキム・へソン(3年、約19億6300万円)、メジャー8年通算167本塁打で、ジャイアンツからFAのM・コンフォート(約26億円))を引き入れた。大谷、M・ベッツ、F・フリーマン、T・フェルナンデス、W・スミスら主力打者は健在だ。
大リーグのワールドシリーズ連覇は1998年から3連覇のヤンキースが最後。今シーズン、偉業に挑むドジャースは補強に手を緩めない。通信社ロイターや米紙「USAトゥデー」はこうしたドジャースのやり方を「悪の帝国」と皮肉っているほどだ。
とはいえ、選手をかき集めたからといって、優勝や世界一に必ずしも結びつかないことは、MLBの歴史が示している。他球団のドジャースに対する反発、やっかみも当然、予想される。今季2025年のドジャースに関しては、まだ「順位は決まっていない」のではないか。(了)